少女趣味こうなあ 長屋版 一
都に雨の降るごとく ヴェルレーヌ
都には蕭(しめ)やかに雨が降る。
(アルチュウル ランボオ)
都に雨の降るごとく わが心にも涙ふる。
心の底ににじみいる この佗びしさは何ならむ。
大地に屋根に降りしきる 雨のひびきのしめやかさ。
うらさびわたる心には おお 雨の音 雨の歌。
かなしみうれふるこの心 いはれもなくて涙ふる
うらみの思(おもひ)あらばこそ
ゆゑだもあらぬこのなげき。
恋も憎(にくみ)もあらずして いかなるゆゑにわが心
かくも悩むか知らぬこそ 悩のうちのなやみなれ。
ご隠居 今月は、ポール・ヴェルレーヌの詩です。一八四四年生れ、一八九六年に亡くなったフランスを代表する詩人です。
虎さん 「都に雨の降るごとく、わが心にも涙ふる」という、最初のフレーズは有名ですな。
ご隠居 ヴェルレーヌでは、〈秋の日のヴィオロンのためいきの 身にしみて ひたぶるにうら悲し。〉という詩も有名やな。
虎さん それもどっかで聞いたことありまんな。ところで最初のランボオというのは誰でんねん。こないだからまた年甲斐もなく復活したやつでっか。
熊さん それは、映画のランボーやろ。ランボオもフランスの有名な詩人や。ランボオと、ヴェルレーヌは師弟関係で、そして○○関係でもあったわけなんですな。
虎さん 師弟関係であってしかも○○関係!。わしとご隠居の関係ですな。
ご隠居 誤解されるようなことを言うな。
熊さん ランボオは詩壇で既に名を博しているヴェルレーヌに、師事を求めて詩篇を添えた手紙を送ったんやけど、その返事にヴェルレーヌは、「待っていた、親愛な偉大な魂よ」と書き送ったぐらいやからなあ。
虎さん わしも昨日ご隠居に言われましたで。
ご隠居 「待っていた」とは言ったけどな。家賃三ヵ月ぶりに持って来た時やろ。
熊さん どうも詩を感じる雰囲気ではないような・・。
梅雨の季節、窓を打つ雨粒を眺めながら、「都に雨の・・・」とつぶやいてみてください。